2025.11.26
【研究成果】 
血中濃度相当の治療薬の持続曝露は濾胞性リンパ腫細胞の薬物耐性因子を誘導する
矢野健太郎准教授らが、研究成果「血中濃度相当の治療薬の持続曝露は濾胞性リンパ腫細胞の薬物耐性因子を誘導する」を学術誌『Drug Metabolism and Pharmacokinetics 』に発表しました。
発表のポイント
・濾胞性リンパ腫は、再発率が高く、再発時には初回治療薬に対する抵抗性(薬物耐性)が認められる。
・がん薬物耐性の研究の多くは、治療時の血中濃度よりも極めて高い濃度の抗がん薬で検討されており、それらの結果から治療時に起きる現象を予測するのは困難である。
・2種類の濾胞性リンパ腫細胞に、治療薬であるドキソルビシンやビンクリスチンを治療濃度で持続的に暴露すると、いずれの細胞も薬物耐性を獲得した。
・薬物耐性を獲得した細胞において、抗がん薬などを細胞外へと掃き出す膜タンパク質であるP-糖タンパク質(P-gp)の発現上昇および輸送機能亢進が認められ、P-gpの機能阻害により薬物耐性が減弱した。
・治療薬によるP-gpの発現・輸送機能は、転写レベルおよび翻訳後修飾レベルのいずれによっても調節されていた。
・濾胞性リンパ腫の再発時に用いられるベンダムスチンは、P-gpによって吐き出されると考えられているが、ベンダムスチンに対する薬物耐性はP-gp阻害薬を用いても僅かに減弱した程度だった。
発表概要
 濾胞性リンパ腫は外科的切除が不可能なため、その治療には薬物療法が極めて重要です。このがんは、再発時には初回の治療薬が効きにくくなることがわかっています。
 一方、これまでに様々ながんにおいて、治療薬による薬物耐性の亢進が確認されていますが、これらの研究は臨床で用いられる体内薬物濃度、すなわち「血中濃度」からかけ離れた(数十倍から数百倍)条件で実施されています。そこで我々は、血中濃度の治療薬が濾胞性リンパ腫の薬物耐性を高めるか、さらには、その薬物耐性には細胞外に薬物を排出するP-gpが関与しているのかを検討しました。結果、治療薬であるドキソルビシン単独あるいはドキソルビシンとビンクリスチンの血中濃度相当の暴露によって、薬物耐性能が数倍から数十倍に高まることを見出しました。
 これは、臨床で使用される薬物量においても薬物耐性が高まる可能性があることを示す、重要な情報と言えます。さらに、薬物耐性を獲得した細胞において、P-gpのmRNA発現量の増加に伴って、細胞内および機能発現部位となる細胞膜上におけるP-gpのタンパク質の発現量の顕著な増加と、薬物排出能力の顕著な亢進が確認されました。また、P-gp阻害薬によりこの機能亢進を減弱させたところ、ドキソルビシンに対する薬物耐性能が顕著に低下しました。したがって、治療薬に対する耐性能亢進には、P-gpの機能亢進が原因となっていることが示唆されました。加えて、再発時の治療薬であり、P-gpによって掃き出される、掃き出されない、という、相反する報告がなされているベンダムスチンに対しても、耐性能が顕著に亢進しており、この耐性能はP-gp阻害薬を用いても僅かな減弱を示す程度でした。したがって、ベンダムスチンはP-gpによってほとんど掃き出されない薬であり、その耐性亢進にはP-gp以外の要因が関与しているものと考えられました。
概略図
論文情報
[掲載ジャーナル] Drug Metabolism and Pharmacokinetics
[論文名]Continuous exposure to therapeutic drugs doxorubicin and vincristine reduces drug efficacy through transcriptional and post-transcriptional regulation of P-glycoprotein in follicular lymphoma
[著者]Kentaro Yano, Yumiko Iwase, Takuo Ogihara, Takashi Kuwabara
[巻号・頁]63, 101495, 2025
[DOI]10.1016/j.dmpk.2025.101495
[PMID]40582293
[URL]https://doi.org/10.1016/j.dmpk.2025.101495
お問合せ先
《この研究に関すること》
発表者:矢野 健太郎(准教授)
所 属:薬物動態学研究室
Email:kentarou.yano@hamayaku.ac.jp
矢野 健太郎のプロフィールは<こちら
《取材・報道に関すること》
〒245-0066
横浜市戸塚区俣野町601
TEL:045-859-1300 FAX:045-859-1301
■メディアセンター
E-mail:media@hamayaku.ac.jp
 
 
©2006 Yokohama University of Pharmacy. All Rights Reserved.