2025.06.28
【研究成果】
 
アストロサイトが担う脳内グルタミン酸制御機構における脳ペリサイトの関与について
坂井助教らが、アストロサイトが担う脳内グルタミン酸制御機構における脳ペリサイトの関与について、学術誌『IBRO Neuroscience Reports』に発表しました。
発表のポイント
・脳ペリサイトはアストロサイトのグルタミン酸取り込み能を上方制御する。
・脳ペリサイト由来液性因子は、アストロサイトに発現するグルタミン酸トランスポーター EAAT2を介したグルタミン酸取り込みを増加させる。
・本研究成果は、脳内グルタミン酸制御異常が引き金となる中枢疾患の、新たな病態メカニズム解明や治療ターゲットに繋がる可能性を示唆する。
発表概要
 本学の坂井研太 助教、福岡大学薬学部応用薬剤学研究室、東京医科大学小児科らの研究グループは、マウスならびにヒト由来細胞を用いて、血液脳関門構成細胞である脳ペリサイトがアストロサイトのグルタミン酸制御機構に関与することを世界で初めて明らかにしました。
 グルタミン酸は、中枢神経系に最も豊富に存在するアミノ酸です。通常は、学習や記憶といった脳高次機能に重要な神経伝達物質としてはたらいていますが、過剰になると神経細胞を傷つけたり死滅させたりする興奮毒性を引き起こす可能性があります。グルタミン酸による興奮毒性は、認知症やうつ病、てんかんなどの神経変性疾患の発症や進行に関与していると考えられています。従って、中枢神経系におけるグルタミン酸濃度は、恒常的に維持される必要があります。
 アストロサイトは、脳を構成する細胞の約半数を占め、脳内グルタミン酸濃度を調節する中心的な細胞です。アストロサイトはexcitatory amino acid transporters (EAATs) を介してグルタミン酸を取り込み、無毒なグルタミンに代謝変換することで脳を保護します。アストロサイトにおけるグルタミン酸取り込みの減少は、認知症やうつ病、てんかんなど多くの中枢疾患で報告されています。
 脳ペリサイトは、アストロサイト・血管内皮細胞と共に血液脳関門を構成し、医薬品や食品成分の脳への移行性を制御しています。他の細胞に比べると認知度が低い細胞ですが、認知症やてんかん患者の脳において、脳ペリサイトの病変化や血管からの剥離が報告されており、病態形成への関与が示唆されています。脳ペリサイトはその局在からアストロサイトと相互作用することが可能ですが、これまでに、脳ペリサイトがアストロサイトのグルタミン酸の取り込みを制御しているかについては報告がありませんでした。本研究における主な知見は、(1)脳ペリサイトがアストロサイトのグルタミン酸の取り込みを上方制御すること、および(2)脳ペリサイト由来液性因子は、アストロサイトに発現するEAAT2を介したグルタミン酸取り込みを増加させることです。本研究成果は、アストロサイトが担う脳内グルタミン酸制御機構における脳ペリサイトの関与を世界で初めて明らかにし、脳内グルタミン酸制御異常が引き金となる中枢疾患の病態メカニズム解明や治療ターゲットに繋がる可能性を示唆しています。
概略図
論文情報
[掲載ジャーナル] IBRO Neuroscience Reports
[論文名]Brain pericytes upregulate glutamate uptake by astrocytes in vitro through sodium-dependent transporter
[著者]Kenta Sakai, Fuyuko Takata, Takuro Iwao, Miho Yasunaga, Gaku Yamanaka, Yasufumi Kataoka, Shinya Dohgu.
[巻号・頁]19, 54-61, 2025
[DOI]10.1016/j.ibneur.2025.05.017
[PMID]40535312
[URL]https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667242125000831
お問合せ先
《この研究に関すること》
発表者:坂井 研太(助教)
所 属:薬学教育センター
Email:kenta.sakai@hamayaku.ac.jp
坂井 研太のプロフィールは<こちら
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