横浜薬科大学
2025.03.07
【研究成果】
新型コロナウイルス感染症の治療候補薬の生体内代謝
埴岡教授らが新型コロナウイルス感染症の治療候補薬の生体内代謝について学術誌『Comparative Biochemistry and Physiology Part C: Toxicology & Pharmacology』に発表しました。
発表のポイント
・抗寄生虫剤として開発されたプロドラッグのニタゾサニド(活性体:チゾキサニド)は、新型コロナウイルス感染症の治療候補薬として注目されている。
・肝臓および小腸におけるチゾキサニドに対するグルクロン酸抱合能は動物種によって大きく異なっている。
・肝臓ミクロゾームにおけるチゾキサニドのグルクロン酸抱合活性は、ラット>マウス≧サル>イヌ>ヒトの順である。
・小腸ミクロゾームにおけるチゾキサニドのグルクロン酸抱合活性は、マウス≧ラット>サル>イヌ>ヒトの順である。
・ヒトにおけるチゾキサニドのグルクロン酸抱合反応には、UGT1A1(肝臓、小腸)およびUGT1A8(小腸)が重要な役割を担っている。
発表概要
 抗寄生虫剤として開発されたニタゾサニドは、寄生生物、細菌およびウイルスに対し広範囲なスペクトルを持つことから、新型コロナウイルス感染症の治療候補薬として注目されています。ニタゾサニドは、生体内で代謝(加水分解反応)を受けたチゾキサニドに変換されて初めて薬効を示すプロドラッグです。
 一方で医薬品としての役割を果たしたチゾキサニドは、生体内で薬理学的に不活性な物質に変換されて尿中や糞中に排泄されないと、腹痛や頭痛などの副作用が現れます。チゾキサニドの不活性化反応(グルクロン酸抱合反応)に重要な役割を担っているのが肝臓や小腸などに発現しているUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)です。UGTは分子的・機能的多様性を示し、哺乳動物ではこれまでに約20種類の分子種が同定され、それの分子種の機能解析が行われています。しかし、チゾキサニドの代謝におけるグルクロン酸抱合反応の意義およびそれに関与するUGT分子種は解明されていません。
 本研究では、ヒトおよび実験動物(サル、イヌ、ラット、マウス)の肝臓および小腸のミクロゾーム画分、ならびに組換えヒトUGTによるチゾキサニドのグルクロン酸抱合反応をin vitro系で追究しました。肝臓ミクロゾームではラットとマウスが、小腸ミクロゾームではマウスとラットが最も活性を示しました。組換えヒトUGTの中では、UGT1A1およびUGT1A8が高い活性を示しました。これらの結果は、チゾキサニドのグルクロン酸抱合におけるUGTの役割が肝臓と小腸で動物種によって大きく異なり、ヒトではUGT1A1(肝臓、小腸)およびUGT1A8(小腸)がチゾキサニドの代謝および排泄に重要な役割を担っていることを強く示唆しているものです。
 本研究の成果は、UGTによって触媒されるチゾキサニドの代謝に関する新規かつ重要な情報を提供し、ニタゾサニドの抗寄生虫、抗菌および抗ウイルス活性の評価に貢献するものと期待されます。
概略図
論文情報
[掲載ジャーナル] Comparative Biochemistry and Physiology Part C: Toxicology & Pharmacology
[論文名]Glucuronidation of tizoxanide, an active metabolite of nitazoxanide, in liver and small intestine: Species differences in humans, monkeys, dogs, rats, and mice and responsible UDP-glucuronosyltransferase isoforms in humans.
[著者]Hanioka N, Isobe T, Saito K, Nagaoka K, Mori Y, Jinno H, Ohkawara S, Tanaka-Kagawa T
[巻号・頁]Vol. 283, pp. 109962, 2024
[DOI]10.1016/j.cbpc.2024.109962
[PMID]38889874
[URL]https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1532045624001303
お問合せ先
《この研究に関すること》
発表者:埴岡 伸光(教授)
所 属:横浜薬科大学 公衆衛生学研究室
Email: nhanioka@hamayaku.ac.jp
埴岡 伸光のプロフィールは<こちら
《取材・報道に関すること》
〒245-0066
横浜市戸塚区俣野町601
TEL:045-859-1300 FAX:045-859-1301
■メディアセンター
E-mail:media@hamayaku.ac.jp
 
 
©2006 Yokohama University of Pharmacy. All Rights Reserved.